ASCII24 / インサイドストーリー
「無料の大量出現が最大の誤算だった」 NTT Com、ホットスポットの読み違いを語る
2002年12月3日
今後の展開が危ぶまれている無線LANのホットスポットサービス。最大手のNTTコミュニケーションズ(株)がこのほど取材に応じ、今後の見通しなどについて明らかにした。同社のサービスはモスバーガーやミニストップなどの店舗で無線LANを使った定額制のインターネットアクセスを提供するもので、この記事にもあるように、加入者数の低迷がかねてから指摘されていた。
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NTTコミュニケーションズのホットスポットサービスのウェブサイト |
取材に応じたのは、NTTコミュニケーションズ・ユーザーアクセス部の加納貴司・担当課長代理。同社はサービスの展開について1万ユーザーの加入があれば黒字化できるという予想を立てていたが、無料サービスを実験的に提供する競合企業が多数出現したことが最大の誤算だったという。参入企業は今秋現在で20社前後と見られているから、たいへんな数だ。
「われわれとしては当初、ホットスポットサービス自体が市場として成立するのかという疑問さえあった。ところがスタートしてみると、メディア各社が好意的に取り上げてくれたこともあり、実態以上に大きく見られるようになり、その結果として多くの企業が参入してくる結果となった」(加納さん)
同社は今年5月15日に有料サービスをスタートさせた。初期契約料1500円、月額利用料1600円という金額は、価格破壊を引き起こしたADSLと比べても半額近い超低価格だったが、会員数は伸び悩む。有料化前の無料実験では約8000人いた加入者数は、一気に1000人台にまで落ち込み、その後もあまり回復していない。
「他の無線LANキャリアでは、先行する米国での例も検討し、月額6000円程度の値段を考えていたところもあったようだ。この値段でなら100万未満のユーザー数があれば、ペイできるという計算だったらしい」(加納さん)
かなり強気の価格付けだが、この計算にはDDIポケットのAirH"など、PHSの定額制データ通信サービスとの比較があったのではないかとみられている。AirH"は月額5800円(ISP料金別)で下り最大32kbpsの通信を行なうことができる。IEEE802.11bの無線LANは、速度はPHSとは比較にならないほど高速だ。もし利用エリアさえ充実できれば、無線LANは十分PHSと競合することができる――それは当然の読みだろう。だが現実には、IT不況下での投資効果の問題からか、提供エリアはあまり充実できなかった。一方、NTTコミュニケーションズは、「自宅のADSLで2000円余りしか払っていないのに、外でそれ以上の金額を払うことはないだろう」と計算。それが月額1600円という料金になった。
現状では低迷しているホットスポットサービスだが、同社は手をこまねいて傍観しているわけではない。さまざまな企業とパートナーシップを組み、新しいサービスやソリューションの提供などを打ち出してはいる。そのひとつが、ニフティ(株)と組んで発表した“@niftyホットスポット”。これまで月額制しか用意されていなかったホットスポットを、@niftyの会員に限って日割りの日額350円(年内は無料、来年1〜2月は250円)で提供するというものだ。また近く、プリペイドカードを使った完全従量制サービスも開始するという。
「もともと日割り計算は提供の用意はあった。だがもし犯罪行為などが行なわれて警察の出てくる場面になった場合、どのように利用者の本人確認をするかという問題があって踏み切れなかった。クレジットカードの本人確認だけでは日本国内はノーグッド。しかしプロバイダーのIDとパスワードがあれば、本人確認としては十分だ」(加納課長さん)
またソニーとホットスポットの自動認識ログインツールを共同開発し、今秋からソニーのモバイル系ノートパソコンにバンドルされているネットワーク環境切り替えツール“Smart Network”に組み込んでいる。またPDAの形態の無線LAN端末を開発する話も進んでいるという。「もう話していないところはないというぐらい、さまざまな会社と話を進めている。ホットスポットに対する業界の関心は驚くほど高い」(加納さん)
同社にとってのホットスポットサービスは、単なるインフラビジネスではないという。加納さんは「通信インフラの値段は超低価格に落ち着いてしまっている。だからホットスポットはその会員から料金を払っていただいて儲けるだけの着地点ではなく、そこからどんなビジネスを展開していくのかということの方が重要だ」と強調する。将来のユビキタス・コンピューティングのビジョンを視野に入れている、というわけだ。
しかし、ではホットスポットをベースにしたコンテンツサービスにどのようなビジョンがあるかといえば、現状ではかなり心許ない。実際、移動体通信系のコンテンツといえば相も変わらず“お店紹介”とか“地図の表示”といったところ。こうしたコンテンツに魅力があると感じている人はたぶん少ないだろう。加納さんも「ウェブブラウジングとメールは、普通のライトユーザーなら外出先ではごくたまに、という程度。それに代わるコンテンツも無料実験の時にいろいろやってみたけど、結局ダメだなあという結論だった」と認めるのである。
そんな中で加納さんが注目しているのが、自宅のホームサーバーとモバイルマシンを無線LANで結ぶ仕組みだ。たとえば自宅のハードディスクレコーダーに保存されているテレビ番組を、無線LAN経由でストリーミングし、手元のPDAなどで鑑賞する。あるいはテレビ録画の操作も行なう。セキュリティーの仕組みさえ確保できれば、キラーコンテンツとして期待できるのではないかと同社では見ている。
「無線LANカードが価格破壊を起こし、さらに昨年秋からはパソコンへの内蔵も進んで、無線LAN利用のインフラは完全に整いつつある。せっかく内蔵されているのだから、ちょっと使ってみたいという人は今後もどんどん増えていくはず。そうしたニーズに応えていくことができれば」と加納さんは期待しているという。
(編集部 佐々木俊尚)
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