ASCII24 / インサイドストーリー
監視カメラ、成田空港にも 財務省は「設置の告示はしない」
2002年8月26日
関西国際空港の税関に顔認識テクノロジーを使った監視カメラがひそかに設置されていた問題で、財務省関税局がASCII24編集部の取材に応じ、「顔認識技術を導入した監視カメラは、今年5月に関空と成田空港に設置した」と明らかにした。
成田空港――首都東京の表玄関である新東京国際空港への新型監視カメラ設置が明らかになるのは、これが初めてだ。関係者の証言によれば、この監視システムはオムロン(株)のFaceKeyを導入している関空とは異なり、東京に本社のある某大手IT企業と契約しているという。
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新宿歌舞伎町の監視カメラシステムには、「傍観カメラ作動中」という告示が日本語と中国語、ハングルで掲示されている |
財務省「監視カメラは広くテロ対策と密輸取締のため」
全国の税関を統括する財務省関税局は、ASCII24編集部の取材に対し、書面で回答を寄せた。一問一答は次の通り。
[ASCII24] 監視カメラを設置したのは、どの空港でしょうか。その時期は。また、設置台数は総計何台でしょうか。また今回設置された各空港の監視システムには、いずれも顔認識技術が組み込まれているのでしょうか。
[財務省関税局] 顔認識技術を導入した監視カメラは、2002年5月に関西空港および成田空港に設置しております。なお、設置台数等、機器の具体的な内容については、監視取締上支障が生じることからお答えできないことをご理解願います。
[ASCII24] 設置目的は、サッカー・ワールドカップのテロ対策ということでしょうか。またワールドカップ後も設置を続けているのでしょうか。
[財務省関税局] ワールドカップ対策を含め、広くテロ対策および密輸取締りのために導入しております。
[ASCII24] 公共の場所への監視カメラの設置の際には、「ここには監視カメラが置かれています」といった注意書きを掲示するのがグローバルスタンダードとなっていますが、関西空港ではこのような掲示はないようです。掲示を行なうかどうかといった議論はありましたか。
[財務省関税局] 昨年9月の米国同時多発テロおよび第3次覚せい剤乱用期といわれている現状を踏まえ、テロリストによる犯罪および不正薬物等の密輸を未然に防止し、有効で効率的な取締を実施することが当該カメラの設置目的であることから、注意書きを掲示することによって、目的達成が困難になるため掲示しておりません。
[ASCII24] 顔認識技術には、照合先の顔データベースが必要となります。このデータベースは、どのような種類のものをお使いですか。またそのデータベースの中には、日本人のデータも含まれているのでしょうか。
[財務省関税局] その内容につきましては、監視取締上支障が生じることから、お答えできないことをご理解願います。
「監視カメラは“盗撮型”になってきている」――小倉利丸・富山大教授
この問題について、インターネットにおける検閲や表現の自由、政府による監視システムをチェックする市民団体“ネットワーク反監視プロジェクト”メンバーで、プライバシーの問題に詳しい小倉利丸・富山大教授に聞いた。
[ASCII24] 顔認識可能な監視カメラの設置が進めば、今後どのような問題が起きてくるのでしょうか。
[小倉教授] そもそも、監視カメラをパブリックスペースに設置することについての是非を考えなければなりません。公道で人に顔をさらしているような場合、プライバシーは存在しないと考えられがちですが、実はそうではないのです。なぜなら現在の高性能な監視カメラは単に景色を撮しているだけではなく、データベースとして利用できるような形で記録しているからです。
たとえパブリックな場所といっても、行動などを記録してもかまわないということにはならない。その監視カメラがどういうデータベースにつながっているのか、そして誰に利用されているのか。そうした基本的な情報にさえ、記録される市民の側からはまったくアクセスできない。これは基本的なプライバシーの権利に抵触します。特に最近は、自己情報のコントロール権が求められるようになってきています。そういう意味で、パブリックな場所であっても、こうした監視カメラを設置することの問題は非常に大きいと思います。
[ASCII24] 財務省は、監視カメラ設置の告知を掲示する必要はないと考えているようですが。
[小倉教授] これも大きな問題です。従来、たとえば銀行の窓口やATMなどでも、監視カメラを設置する場合は告知を掲示するのが一般的でした。しかし最近、そうした注意書きを掲示しないケースが増えてきているようです。たとえば街頭に監視カメラを設置して話題になった新宿歌舞伎町の場合、50台の監視カメラのうち、告知がなされているのはごくわずかしかありません。おまけにカメラ自体もドーム状のカバーに覆われていて、焦点がどちらに向けられているのかがわからないようになっています。
そういう意味で、最近の監視カメラは、盗撮型になってきているといえるかもしれません。従来なら告知するべきだと考えられていた部類のものまで、政府や警察当局は無視するようになってきているのが現実です。
[ASCII24] 今後はバイオメトリクスと監視システムが結びついていく場面はどんどん増えていくでしょうね。
[小倉教授]
バイオメトリクスに関しては、企業もビジネスとして大きく注目するようになってきました。特に本人認証などの分野での成長が著しいようです。
その一方で、企業サイドのプライバシーへの関心は非常に薄い。バイオメトリックスが「意味」を持つためには、生体識別情報が他のその個人の社会的な活動データと組み合わされる必要がある。たとえば顔データであれば、警察の持っている免許証の写真データベースと照合されているのか、それとも犯歴データベースと照合されているのか? それによってデータの持つ意味は変ります。
そうした運用の方法について何らの歯止めもなく、政府や警察の裁量に委ねられていること、こうした事態のもたらす深刻なプライバシー侵害の問題に市民側の認識が必ずしも十分でないという問題がある。さらに、たとえば犯歴者のデータベースがバイオメトリックスなどと連動して利用されるとすると、今後、前科、逮捕歴のある人が現時点では何の犯罪も犯していないのにも関わらず、常に将来犯罪を犯す可能性があるのではないかとの疑いの目で監視される事態だって起きうるわけです。もしそんなことが起きたら、戦前の警察の“予防拘束”につながりかねません。そしてこうした監視カメラと警察のNシステム、免許証写真、自動車のナンバープレート、そして、住基ネットの個人コードなどを組み合わせれば、個人の行動の詳細な追跡が可能になってしまうのです。
(編集部 佐々木俊尚)
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