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【CeBIT 2006 Vol.1】英ボーダフォンCEOのサリーン氏が基調講演――「サクセスストーリーの最終章は、まだ書かれる段階ではない」


2006年3月9日

ヨーロッパでは最大規模となる情報通信産業の展示会“CeBIT 2006”が、ドイツ北部のニーダーザクセン州ハノーバーのハノーバーメッセで、現地時間の9日から15日にかけて開催される。主催は、ドイツ産業見本市社(Deutsche Messe AG)。9日の開幕に先立つ8日には、プレスカンファレンスや基調講演が行なわれた。

ハノーバーメッセ入り口
会場のハノーバーメッセ入り口。8日の朝は晴天だったが、昼過ぎからは雪が散らついた
記者会見が集中して行なわれるカンファレンスセンター
記者会見が集中して行なわれるカンファレンスセンター。プレスセンターもこの中にある

1987年に初めて開催されたCeBITは今年で20周年迎え、世界71ヵ国から6262社(2005年は6270社)が出展した。今年開催される“2006年FIFAワールドカップ”ドイツ大会に照準をあわせ、家電メーカー各社は大画面テレビやデジタルビデオレコーダーなどの展示に力を入れている。また、携帯電話機の新製品やIP電話やIPテレビ、ホームコンピューティングも主要な展示の1つとなっている。

「中国、インド、アフリカが重要になる」――Vodafone Group社長兼CEO

基調講演は、8日午後6時よりハノーバー コングレス センターにて行なわれた。メインスピーカーは、英ボーダフォングループ(Vodafone Group Plc.)社長兼CEOのアルン・サリーン氏だ。また、女性として初めてドイツ首相になったアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)氏も登壇した。

英ボーダフォングループ社長兼CEOのアルン・サリーン氏
メインスピーカーである英ボーダフォングループ社長兼CEOのアルン・サリーン氏
アンゲラ・メルケル独首相
独首相のアンゲラ・メルケル氏は、ドイツのIT産業振興のために「250億ユーロ(3.5兆円)の投資を行う」と約束した

英ボーダフォングループのCEOであるアルン・サリーン氏は、講演の冒頭、メルケル氏が携帯電話でメールをやり取りするのが好きなことに触れ、「もし私の講演の途中でメールを送っても、私は気にしませんので遠慮なくどうぞ」と呼びかけ、会場の笑いを誘った。

サリーン氏は、「今年のCeBITは20周年を迎えたが、ボーダフォンもわずか20年の歴史しかない。この20年で、携帯電話産業は、急速な成長を遂げた。次の20年も、このサクセスストーリーは続くが、今までとは、異なったストーリーとなるだろう」と語り始めた。そして、ボーダフォンが考える「IT産業の過去と未来を考える上で重要な4つの問い」を提示した。それは、

  1. 過去20年の成功をもたらしたものは何か
  2. 現在、何が起きているのか
  3. 未来の成功は、誰がもたらすのか
  4. 1〜3の問いは、何を意味するのか

――というもので、サリーン氏の講演は、この4つの問いに答えるかたちで進められた。

過去20年の成功をもたらしたものは何か――「消費者の需要を満たすビジネスが先導」

サリーン氏は、「過去20年の成功をもたらしたものは何か」という1つ目の問いに対して、「世界を変えてきた技術革新は、蒸気機関、電気、パーソナルコンピューター、携帯電話機と段階的に発展してきた」と述べた。そして、さらにこれらの技術は「消費者の需要を満たしてきたビジネスが、技術革新を先導してきた」ことを強調した。そして、“ヨーロッパの携帯電話産業が過去15年間世界をリードしてきた理由”として、「いつでもどこでもコミュニケーションしたいという消費者のニーズに応えてきた」と自賛し、さらに「ヨーロッパのGSMという技術が、世界共通の技術基盤と相互接続性の確立をもたらした」と述べた。

現在、何が起きているのか――「携帯電話産業の未来を過小評価してはならない」

「現在、何が起きているのか」という2つ目の問いに対して、サリーン氏は「携帯電話産業の未来を、過小評価してはならない」と、強調した。サリーン氏は、現在イギリスの携帯電話利用者は6000万人であり、携帯電話の利用者が10万人しかいなかった20年前には誰も現在の状況を想像できなかったことを挙げた。それから転じて、現在の状況からだけで未来を考えると“未来を過小評価”することになると強調し、「『携帯電話は成熟した産業で、後はバブルが弾けるだけ』という意見もあるが、私は同意しない」と主張した。そして、「新しいサービスを作り出すために、ボーダフォンは、米マイクロソフト社や米グーグル社など、さまざまな企業との提携を進めている」と述べた。

未来の成功は、誰がもたらすのか――「消費者の需要が我々の未来を決める」

「未来の成功は、誰がもたらすのか」という3つ目の問いについては、「一言でいえば消費者。消費者の需要が、我々の未来を決める」と強調した。サリーン氏は、そうした“新しい”消費者を“デジタル・エイジ・コンシューマー(Digital Age Consumer)”と呼び、彼らがIT産業を活性化させると述べた。デジタル・エイジ・コンシューマーには、電子メールやチャットなどのコミュニケーションに費やす時間が長く、デジタルコミュニティーへの参加意欲が高く、携帯電話機やノートパソコンなどのモバイルの活用が進んでいて、時間を節約する意識が高く、コンテンツへのニースが高い――といった特徴があるのだという。こうした人々は、欧米などの携帯電話が普及している地域で共通して見られるのではないだろうか。

一方、「携帯電話機を持っていない人々の多くは、中国、インド、アフリカなどの新興市場にいる」とした上で、これからは、「これらの新興市場が我々の産業にとって重要になってくる」と強調した。「携帯電話産業には、欧米の企業が多いが、これらの新興市場では、欧米の消費者とは異なるニーズが存在する。それを理解して初めて、これらの新興市場に進出できる」とした。しかし、戦略上の理由からか、“ニーズ”の詳細は明らかにされなかった。

1〜3の問いは、何を意味するのか――「携帯電話産業はもっと発展する」

「1〜3の問いは、何を意味するのか」という4つ目の問いに対してサリーン氏は、いくつかのポイントを提示した。まず、携帯電話機やノートパソコンの普及により、音声や電子メールだけでなく、ネットワークに常時アクセスできる環境が求められるようになる。また、IP技術の普及とともに、さまざまな機器のインターオペラビリティー(相互接続性)が重要となる。そして、「新しい技術やサービスを発展させるには、政府が規制をすることよりも、市場原理にまかせるべきである」と、政府よりも、企業が新しい時代を先導することを強調した。

講演の最後にサリーン氏は、「携帯電話産業のサクセスストーリーの最終章は、まだ書かれる段階ではない。消費者のニーズに応え、新しい価値やサービスを作り出すことで、我々は、携帯電話産業を、もっと発展させることができる」と締めくくった。なお、基調講演では、日本法人の売却に関するコメントはなかった。

(安藤 怜)


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